第93期 #27
ニミリロクキロ
リボルバーで死ねない時。
対戦車砲で自殺出来ない時。
くじらの背中に書かれた文字。
「肖像画を描いてあげよう」
「髪は切りますか」
雨が降っている。じきに虹が出る。ぼろぼろの虹、の絵が壁に飾ってある。電話のベルが鳴っている。ベッドから起きられない。
「銃か」
「ええ」
「詩を書くのか」
「ええ」
首を絞めながら髪の毛を切りながら絵を描きながら虹、切りながらわたしたちのあい、タキシード、ネクタイ。夜会。シャンパンにて十字路にて燃やされたファイヤア―両手のでもわかるんだ。触れるんだ。肖像画。くろくうつくしいじゅうじか。さわる。ぼろぼろにくろくさわる。黒く崩れていく。昔人には手が百本あったという。長い時間をかけて地図、の向こう側、長い長い時間をかけて、手を二本にまで減らしたのだ。
しをかくのか。ええ。わたしはかけない。
「また変な髪形にされたな」
「また変に描かれたわ」
かくめいのひ、革命に行かないのかと聴かれる。
革命軍の服はドレスだった。オルガンを弾いていた。ドレスもオルガンの音色も美しかった。ダンスを教えているうちに理由も無く涙が出てきた。
人は泣くんだな理由無く。
ピアス。
十字架を持っていたのにそんな事も忘れている。
「皆は何をしているの」
「あいのうたを書いてくれよ」
愛してるあいしてるあいしてる。もっと? クラクション。二人でベッドを置いて寝てみたらそれが解るのだという。あいしてるあいして。あいのうたのはずなのにどんどんとあいから遠ざかっていく。ジミ・ヘンドリックスの燃やしたギターの音。革命の日。私たちは変わる。知らなかったこと気づかなかったことを気づく。
どこまでもどこまでもどこまでもドレス。私たちの跳べたころ。ポルノオが壁を白く塗っていた。
「革命だかなんだか知らねえが仕事がやりやすくてな。仕事がやりやすいのは良いことだ」
「壁を白く塗るといくらになるんだ」
「パンを二個とカフェオレだ」
「お前は優れた画家だよ」
「俺もそう思うよ」
税関の職員はまったくやる気が無かった。扉を開け放ち
「向こうが砂漠だ。シガレットがたくさん落ちてた。誰かが禁煙を始めたのかもしれない」
フランケンシュタイン。シガレットとクスリで出来ている。血は真っ黒なコーヒー。
「なあ、俺はゲイかな?」
「なんでだ」
「愛せない。愛したことが無い」
「話が混同しているな。ゲイとは関係ない気がするぞ」