第92期 #9

偽りの恋の色

―ねぇ、知ってる?黄昏の本当の意味…―
―夕暮れなんかじゃないんだよ?―

「え!?これどう言うこと!?」
目の前にいる男女二人に動揺する千尋。

「黙っててごめん!!」

最近学校を休み続けていた親友の梓。
その隣にいるのは私の元彼…。

梓が休んでいた理由は直ぐわかった。

(梓、妊娠してる…)

「何で?…」

「俺らの子供」

彼女の困惑の言葉は無視するような、噛み合わない会話。

「ごめん…千尋」

「いいよ?わかった、京はあたしの事好きじゃなかったんだよ」
今にも泣きそうな心を閉ざし笑顔で返す。
こんな静寂辛すぎる…。
ここから逃げないと心が潰れる。

◇◇◇◇◇

逃げた。

重みから、痛みから。全てから。

どうして?京はそんな人じゃない。私の好きな人だもん。
信じたい。

まだ好き。

学校帰り、綺麗な夕暮れの色に染まる千尋の影は暗く真っ黒だった…

{{話したい、いつものとこで待ってる}}

足の向かう方は、いつもの場所。

◇◇◇◇◇

「千尋…」

公園のベンチに座る二人の男女の会話。

「俺、今でもお前のこと好きだ、お前以上に」
「嘘だ…」
本当は嬉しい。でも信じたくても信じるのが怖い。

少しの静寂…

「流産させる気でいる…」
「え?」

彼女はそのあとすべての理由を聞いた。
梓が京を好きで、京を騙して一夜を過ごしたこと。
全て。
別に梓を責める気はない。今は嬉しくて、嬉しくて…


◇◇◇◇◇

「京ッ…」
暗闇。暗い。
京の顔も見えない。

―知ってる?たそがれの意味―

「千尋…愛してるから…」
いつもの京じゃない…?

―夜暗くて、人の区別がつかない時間帯だから―

「どうしたの?京…何か、変…」
震えた声で言うその言葉はどこか恐れているようでもあった。
「…お前は嫉妬も何もしないのかよ!!」
怒ってる。
でも、それ以上は何も言わなかった。ただ私に気持ちを伝えてくれる。京の体をつたって…。
―「誰そ、彼」それが黄昏―

黄昏の色は夕日の色なんかじゃない。
黄色でもない。
真っ暗な色だった…



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