第9期 #6
「お父さぁん。遊んでよ〜!」
「ねぇ、お父さん!!」
子供たちの言葉に、父親はけだるそうに答える。
「ゴールデンウィークっていうのは、いつも働いてる人がゆっくり休む日なんだぞ」
そのまま父親はまた目を閉じて横になってしまった。
「お父さんったら、そんなことばっかり……」
母親は苦笑いを浮かべたが、休日特有のけだるさから、それ以上は何
も言わない。それどころか母親もゆったりと体を休めてしまっている。
「「つまんなーい」」
異口同音に呟くと、姉弟は退屈しのぎにじゃれ合い始めた。
「えいっ!」
「お姉ちゃん、上に乗ってこないでよぉ」
子供たちの微笑ましい姿に、母親は目を細めた。
「あら、お隣はお出かけね」
子供たちの下をのぞき込み、母親がそう呟いた。
「お父さん、うちの鯉のぼり、全然泳いでないね」
「鯉のぼりさんもお休みなんだろう」
親子が見上げた先で、鯉のぼりたちはそよ風にかすかに揺れるばかりだった。