第9期 #18

人食いブタをやっつけろ!

「人食いブタが出るんだって!」
 とはじめに言いだしたのはレバーだ。レバーは太ってて色が白いやつで、ランドセルにバレーボールのシールを貼っていたからバレーというあだ名がついた。けどバレーがへたくそだったから、レバーになった。
 人食いブタの話はおじさんから聞いたらしい。ふつうのブタのなん倍も大きくて、小さい子供は丸ごと食われてしまうそうだ。レバーがぼくにその話をしたのをシバ子が聞いていて、シバ子はおしゃべりだからすぐみんなに広まった。
 チームがいくつかできた。チームフェニックスはしっぽをつかんだけど逃げられたと言っていた。とんこつ軍団は子供が食われそうになっているのを助けたということだった。
 学校が終わると、ぼくたちユニコーンズは秘密基地に集まる。ユニコーンズはぼくとレバーとガネコの三人で、レバーのじいちゃんの山で見つけたタイヤのついてない車を秘密基地にしている。うしろの席がぜんぶ取られていて、中はけっこう広い。
「レバー、人食いブタ探しに行こうぜー」
「えーやだよー」
「だって勝てるのはレバーしかいないよ」
「なんでだよーこわいもん」
「レバーなら体でかいから、丸ごと食われたりしないよ。ぜんぶ食われる前に人食いブタが腹いっぱいで動けなくなったら、レバーの勝ちだ」
「ちょっと食われるのだってやだよー」
「大丈夫だよ、バンソウコウつければ治るんだから」
 レバーはぶんぶん首を振った。体がでかいくせに、ほんといくじなしだ。
 ガネコはいつものように機械をいじっている。ガネコの本名は金子なんだけど、メガネをかけてるからガネコになった。
「そいつまだできないの?」
 ガネコはずっとロボットを作っている。名前はジェネシスにするかユニ丸にするかでもめている。
「あと二年半はかかるよ」
「ダメだよ! そんなにかかったら他のチームがやっつけちゃうじゃん!」
「そんなこと言ったって無理だよ。ふつうに作るんなら二年でいけるけど、腕飛ばしたりするならもう半年はかかる」
 まったく! みんなぜんぜんダメだ。
 ピピピピピ、とタイマーが鳴った。さっきはレバーが行ったから、今度はぼくの番だ。トランクを開けて、秘密基地の外に出た。
「トンカツースブターブタノマルヤキー」
 手を三回たたく。そうすれば三十分は人食いブタは寄ってこない。あと二年半なんて、それまでに何回これをやんないといけないんだ。
 夕日が沈みそうだ。そろそろ、帰らなきゃ。



Copyright © 2003 川島ケイ / 編集: 短編