第9期 #15

真っ赤な

 昼休みの時間、37人のクラスメート達は皆ひどい顔をしていた。
 彼らはそれぞれに人を殺してしまったのだ。
 なぜ私がそんなことを知っているのかはわからない、はずが、これはどうやら夢の中のことなので、そのうちの数人の犯行場面が映像として夢を見ている私自身には記憶されている。
 昼休みのいま、彼らは自分の罪が暴かれることを恐れていた。

 夢の中の私は、給食を皿に取り、椅子に座る。窓の外は真っ赤だった。景色はない。かといって何もないわけはないのだが、意識はそちらに向かわず、夢の中の自分自身の後ろ姿を見ていた。六つの机が向かい合わせになっている中の、端の席だった。顔を見られないようにうつむいてパンをかじっている。クラス全体を見回すと、みんなそうだった。
 話すこともなく見るものもないので、椅子に座っている私は、あるいは椅子に座っている私を見ている意識である私は、記憶に刻まれた犯行の場面を、まるで薄いセロファンに描かれている絵を手に取るようにして、じっくりと眺めた。犯行の場面には殺された者の姿は映っておらず、ただ、クラスメートの怯えた表情だけが見えてくるのだった。

 目が覚めたときに、隣りに寝ていた彼女にその話をした。
 あなたも誰か殺したの、と彼女は聞いたが、その答えを私は知らない、はずが、そう彼女に言われて思い出したのだが、どうやら私も一人殺した設定だった、と私は記憶している。どっちだと思う、と彼女に聞くと、殺したでしょ、と彼女は言い、なんでそう思うの、と返すと、顔を見ればわかると答えた。たぶん、悪夢にうなされ憔悴した顔をしているのだろう。私は、教室にいたクラスメートよりも、いまの自分のほうがきっとマシな顔をしている、と彼女に言った。
 「だって告白したんだから」
 それからベッドを出て洗面所に行き顔を洗った。そのひどい顔を見て思い出したのだが、私は夢に見てしまった罪を告白したつもりが、まだ彼女に黙っていることがある。というのも、夢の中、私が殺したのは彼女だったのだ、と私は記憶している。
 黙っておこうか迷いながら部屋に戻った。彼女がいないのに気づき、隠れているだろうと思いベッドにゆっくり近づく。近づきながら、夢では見ることの出来なかった外の景色に目をやり、薄く雲のかかった空、葉のない枝、割れたガラス窓を通って真っ赤に染まったベッドの上にこぼれる弱々しい光を、とても暖かく、美しいと感じた。


Copyright © 2003 林徳鎬 / 編集: 短編