第87期 #2

巨乳娘と貧乳娘

 麗らかな木漏れ日の中。

「おっぱいがデカい女ってムカつかね?」

 オープンカフェで時を過ごしていた私の耳に、女の声が飛び込んできた。歩道にせり出して置かれているテーブル席に座っていた私は、声のした方を見る。
 同じ様なテーブルの一つに女の子二人組が座っていた。

「私は羨ましいよ」

 胸元がまな板の様な子がそう言うと、

「脱いだら垂れてるって」

 推定Bカップの貧乳娘が反論した。話のテーマは胸の大きさか。

「ごめんね? でかくて」

 彼女達の隣テーブルに座っていた二人組の一人、推定Gカップの巨乳娘が突然笑い声をあげた。

「はぁ? 普通が一番じゃね」

 Bが負けじと反論した。BとGの間で火花が散り論争が始まる。

「私AAカップです」

 Gと一緒に座っていた子も会話に乱入。まな板の表情が変わる。

「私も。太らない代わりに胸も太らない」
「太らないけど女として悲しいですよね」

 まな板とAAが共感した模様。貧乳が巨乳がと罵り合うBとGの口論を余所に、貧乳話で盛り上がっている。

「うん、悲しい。食べても太らないの羨ましいとか言われるけど、それは自分で我慢すればいい。胸は頑張っても無理」
「夏も嫌ですよね、可愛い服着てもハンガーに干してるみたい。最近のキャミ胸元△△になってるし。お互い大変ですね」
「解る。貧相に見えるの嫌だから最近はふわふわしたシフォンの着てる。上手くやって可愛く着れる様に頑張ろ!」
「はい、何かAAでも勇気出ました!」

 片やBとGの口論が続いていたその時、

「乳輪が大きい人は嫌です」

 スーツの男が立ち止まり突如として意見を挟む。

「あ、すんません」

 Gが笑いながら返すと、男はさっさと歩き去った。

「ムカつく。寝る」

 Bはそう言ってそのままテーブルに突っ伏してしまった。

「何でむかつくのか気になる」とG。
 男の人の興味の行き方からしても、それはやはり嫉妬じゃない?

 伏せていたBが顔を上げた。

「我慢してたけど眠れない。一人でムカついてごめんなさい」

 Gは笑顔でBの頭を撫でていた。どうやら和解した様だ。
 私の隣テーブルでふと声がした。

「体に合わせると胸が入らず、胸に合わせると体がブカブカ。伸縮するのでも胸を締め付けて胸下は汗だらけ。ブラも可愛くない」

 見ると太った娘がボソボソ呟いている。
 私は自分のEカップを見て胸を撫で下ろした。



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