第87期 #17

祝福?何それ食べれるの?

 あの……私なんかしたっけ?私はただ、貴方が大好きだっただけなんだけどな。

 「でさ、祐樹は女の子と並んでても引けをとらないくらい可愛いなって思ってさぁ」
「いや、まぁ……否定はしないよ、お兄ちゃん可愛いし」でも普通元彼女に、しかも現在彼氏の妹に惚気にくる?!
お兄ちゃんがホモなのもいいわよ別に!
元彼氏がホモでもいいわよ!
付き合ったって当人同士が良いならそれでいいわよ、お兄ちゃんは私ばっかり優先してたし……良い傾向だとも思うわ、でも!

 「祐樹ってばさぁ、キスもまだ馴れないみたいでさぁ」
何が悲しくて、お兄ちゃんのそーゆう話聞かなきゃいけないの?
「なぁ、聞いてる?」
「ん?ごめん帰る」
「えぇ!こっからいいとこなのによぉ」

 私は貴方が本当に好きだった、だからいつかは振り向いてくれるって信じてたの、好きな人が居るって言われても、諦められなくて……それでも、良いから付き合ってって言ったのは私だった。
 でも、私の家に来てお兄ちゃんの顔を見た貴方の目がキラキラしてて、そこからは貴方に好かれるようにって頑張って、でも駄目だった。

 だって最初から好きなのは私のお兄ちゃんだった、彼氏がホモなのにもショックだったけど、同じ血が流れてるはずなのに、なにが違うんだろうって正直嫉妬して……

 お兄ちゃんに会いたくない、のに「もう、家……」でも嬉しいんだ、毎日毎日お兄ちゃんすごく嬉しそうだから。
 「あれ?莉子、帰ってたんなら声かけてくれれば良いのに」
「うん、ただいま」可愛いなぁお兄ちゃん、あんなに一途に想って、今なんかクリスマスケーキの練習してる。

 「ねぇ莉子、僕はこのままでいいのかな……莉子の幸せを壊してまで、その……」
「駄目、って言ったって、亮介が今好きなのはお兄ちゃんなんだもん、しょうがないよ」

 今は素直に喜べない、でも心から祝福してるのは本当。
「ふふっ健気で可愛いでしょう?私」
「うん、とっても可愛い、自慢の妹だよ」
「お兄ちゃんに言われてもうれしくなーいー」
 ちょっとふくれて言ってみれば、眉毛を八の字にしてごめんって言うお兄ちゃんがいて、私は笑ってしまった。
 こりゃ、亮介が惚れるのも仕方ないかぁなんてね。

 しばらくは二人の惚気聞いてあげてもいいかな、私位しか惚気る相手も相談する相手もいないんだろうから。


「私って優しいなぁ、なんてね」



Copyright © 2009 のい / 編集: 短編