第85期 #24

おフトン姫を読んで思ったこと

空が青かった。男は有限会社に出勤して働いた。
男は、昼食のダイコンおろし油そばコマツナ入りをラーメン店ですすっている最中に、小学生時代から知っているある男性の知人が、仕事を辞めて毎日布団大臣を決め込んでいるという話を知人の妻からゆうべ聞いたのを思いだした。布団の中から、生活経済への的確で迅速な指示を繰り出すのだそうだ。
男は帰宅した。白飯に玉子と正油をかけたものとカブとカブ菜とニンジンの浅漬を食べた。途中で慌てて、解凍したホウレンソウをお浸しにして副菜にして食べた。
週末に布団大臣宅を表敬訪問した。
大臣は布団に入っていた。大臣の妻がその布団の脇のちゃぶ台的ミニテーブルにホットコーヒーを置いてくれた。
大臣は仰向けに寝ながら、お辞儀蛇腹付ストローでアイスコーヒーを飲んでいた。大臣の頬の横にコップを置くと、ちょうど蛇腹の創り出すカーブでストローの先端が大臣の口元に到達するのだった。
大臣が自信たっぷりに言った。
「このポジショニングを発見するのに俺は三日しかかからなかった」
大臣は続けた。
「この布団生活に欠かせない、午後の休息のためのアイスコーヒーが飲み放題のこの配置に、わずか七十二時間しか必要としなかった」
大臣は手で支えていたアイスコーヒーを枕元から遠ざけて、男を睨みつけた。
「どうだ、俺には布団大臣をやっていく才覚があると思わないか」
男は、大臣から目を逸らして、休息のアイスコーヒーっつったって年柄年中休んでいるようなもんだろうが、と心の中で毒づいた。
大臣の妻が、ネギ、シイタケ、カマボコ、天カス入りの鍋焼うどんを作った。
男、大臣の妻、大臣、みんなで食べた。ひとつの大きな土鍋から一人分ずつのうどんをお椀によそって分けた。
男は言った。
「ばんざあい」
大臣はこれは仰向けでは食べれず、うつ伏せで食べた。大臣は食べている最中に、
「熱い、熱い」
と苦しそうに言っていた。うつ伏せで食べると食べにくくて、汁がはねて大臣の顔に飛んできていた。
男は、帰る時に大臣の妻に、大臣に聞こえない声で訊ねた。すると大臣の妻は、ええそうですあれは復讐なんです、とほくそ笑みながら答えた。男もつられて笑ってしまった。
男は、うどんだけでは物足りなかったので、家に着く前に牛丼店に入って、生玉子をかけた豚丼を食べた。紅生姜。食べている最中に思い出して、生野菜を追加注文した。キャベツが主体のサラダに和風ドレッシングをかけて食べた。



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