第84期 #12

ヨル

何だかとても静かだったのです。
キャンドルに薄緑色の小さな紙をあてたら、微かに揺れて小さな音がしました。
灯をみつめて、狭間にいるような、遠くにいるような、心地です。

まが玉形にゆっくりと、灯が、揺れました。

あぁ、夜がいらっしゃる。

左の肩と背中がしっとりとして少し重いので、分かりました。


こんばんは。

ため息のような囁き声が左耳から聞こえたので、

いらっしゃいませ。

と内省するように呟きました。


夜はいいました。


キャンドルの灯が永遠ならば、そう願うのでしょうか。


あぁ、漸く、こうたずねられる時がきたのですね。


今は、朝日の留守と闇の帰宅をのぞみます。

夜は、ため息で灯を消して、小さな粒になりました。まだ少し灯を含んでいる薄緑色の小さな紙の上に座って、隙間からするりと抜けていきました。



Copyright © 2009 あかさ / 編集: 短編