第82期 #27
冥王星。数多に輝く星空の中でたった9つだけ、名前がある星の1つ。その冥王星が、冥王星でなくなった。名前のない、数多に輝く星達に溶け込まれ、見えなくなった。そう、あれほど熱い想いを秘めていたのに、ある日突然いなくなったあの子のように。
君と過ごした時間は、人生の長い時間で考えると、とてもとても短いものだったけど、それでも僕は楽しかったよ。君は以前言ったよね。「私は一番外側にいるから客観的に物が見えるの。」本当にすごいと思う。誰でもみんな、内側に入りたいはずなのに、あえて外側に立ち、みんなの様子をじっくり伺う。僕はそんな君が、好きだった。そして君も、僕のことを好きだと言ってくれた。あのときは、本当に嬉しかったよ。
なのに君は、何も言わずに僕の前からいなくなった。なぜ?どうして?いくら考えても、答えは見つからない。唯一分かるのは、君の意志ではなかったこと。君を取り巻く周りの人達が、君の意志を全く無視して決めたのだろう。それくらい、僕にもわかるよ。だって君は言ったじゃないか。君がいなくなる前日、いつも立ち寄る公園で「今度の夏休み、2人でどこかに旅行に行こうね。約束。」と。その約束はもう、守れないのかな。
数ヶ月後、差出人不明の封筒が届いた。少し怪しげに思いながらも封を開けると、数枚の手紙が入っていた。一目見たら分かった。君からだということが。まだ読んでいないのに、涙が流れた。「泣かないで。きっとまた会える日が来るから。だから、泣かないで。」涙が溢れて、全文はよく読めなかったけど、この一文だけははっきりと読めた。だからこそ気付いたのかもしれない。手紙の所々に、僕のではない涙が落ちた跡があるのを。君はこれだけの涙を流しながら、この手紙を書いたんだね。涙を流しながら、僕を気遣って、泣かないでと書いたんだね。そう思うとますます涙が溢れてきた。君にお願いしてもいいかな。明日からはもう泣かないから、今日だけは、思う存分泣かせてくれ。
きっと、僕が生きている内はもう会えないと思うけど、君が言うように泣かないで、また会えることを信じるよ。
僕がそう決意したその日、僕と君のいつもの公園には、秋には似合わない春を感じさせる穏やかな風が流れた。そこで僕は空を見上げて、君の面影を見つめているよ。