第82期 #19

あいつ殺そう計画

私の学校では『あいつ殺そう計画』というゲームが流行っています
ルールは簡単。気に入らない奴を選んで、そいつをいじめるだけです
でも、ただいじめるだけではダメです
やるからには徹底的に。それがこのクラスの番長的存在である林君のポリシーなのです

一部の不良達から大変人気なこの計画ですが、第二回目の抽選日となる今日、不幸にも目をつけられてしまうのは一体どなたでしょうか
「あいつにしようぜ」
私の後ろから林君の声が聞こえました。どうやら対象者が決まった様です
今日から私は、内心ドキドキしながら計画の実行を待つ事になります
不安や恐怖は勿論ですが、私も人間です。気に入らない奴の一人くらいはいます
そいつが選ばれればいいな、という気持ちだって……

私は小六の女の子です。最近になって生理もきたし、胸だって男子とは違います
ブラも数着くらい持っています。必要と感じたのは今年になってからです。それまでは多少こすれようと気にしていませんでした
その時に見られていたのかな、学校の裏サイトの掲示板に私の事が書かれていました
“英梨の乳首って黒いんだぜ?”
こんな嘘っ八、最初は相手にしたら負けと思っていました。けど、翌日になってもそれは続きます
“英梨は彰と付き合ってるらしい”
彰は授業中に脱糞したパンツを私に投げつけてきた……要は私が一番嫌いな男子です
学校でも話題になっていました。直接は聞いてないけど、そうに違いありません
私が教科書を忘れた彰に教科書を見せただけで「ひゅー」とからかわれました。私だって好きで見せた訳ではありません。先生に言われて仕方なくです
その時から私を見る皆の目が好奇の眼差しへと変わっていく様でした
親友の恵も私に話しかけてくれなくなりました
皆して私を汚物扱いしている様でした
裏サイトにああいう事を書く奴がいる。どうしてまっすぐ生きられないの。ムカツク
犯人を見つけてこらしめてやる。私が受けた苦痛と同じ思いをさせてやる
そう思いました
だけど、匿名の掲示板です。誰が書いたかなんて解りません
どうしたらいいのと考えている時に、ふと気がつきました
あの計画に、私が……?

「日記はここで終わってます」
「自分で首を吊ったのだろう……かわいそうに」
「生徒の話では前回の……その『あいつ殺そう計画』とやらに選ばれた小出凛も自殺したそうです」
「死因は?」
「練炭自殺です」
「僅か二ヶ月の間に同じ学校で二人も……林容疑者を署まで連行しろ」



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