第81期 #7

クランベリージャムにコンドーム

 クランベリージャムを作っていた農家の青年とヘルパーロボットは、世界恐慌による売り上げ不振に悩んでいた。
 どうしたらクランベリージャムを大ブレイクさせて、あたらしい洗濯機と養老の滝のジオラマが買えるのだろうか。
 そんなある日、ネットでコンドームにアイスクリームを詰めて投げつけあうという奇祭の風景を目の当たりにし、アイスクリームの変わりにクランベリージャムの方が高級感があって満足度が高くなるのではと考え企業に売り込むことにした。
 カジュアルに奇祭を楽しめる、名付けて「カジュアル奇祭」の第一歩としてプレゼンの資料を準備しコンドームメーカーに乗り込んだ青年の見たモノは、コンドームに肉じゃがを詰め込むという新たなマニュフェスト製作中の家内制手工業現場であった。そして出迎えた社長はいう。
「クランベリージャムの酸っぱさは、コンドームにはあわない」
絶望する青年。だが、そこに突っ込んできた飛行機から降りてきたパイロットが死ぬ直前にクランベリージャムを欲しがったため、全国にクランベリージャムブームが起きる。メーカーもそれに乗りクランベリージャム入りのコンドームを売り爆発的なヒットを記録するが、同時に肉じゃがを推進する政党から嫌がらせの無言電話がかかるようになった。でもクランベリージャムが大ヒットし、「カジュアル奇祭」が国民の定番行事となったことにより、誰も困るものはいなかった。



「やりましたね博士」
「ふっふっふ、よもやアレがゴムだとは誰も気づくまい」
 ディスプレイには子供達が無邪気にヘリウムを入れぷくぷくに膨らましたコンドームを片手に、仲良く遊んでいる姿がまざまざと映し出されている。そう、ちょっと小さめのバルーンアート用風船などという偽りの謳い文句を付けて街中で可愛い着ぐるみ人形に配布させているコンドームを手にしながら。
「彼らは全く気づきませんね博士」
「当然だよ、色々と危ない薬剤使って誘発剤作用とか効てるから」
 そんな他愛のないやりとのさなかも子供達は天真爛漫な笑みを顔いっぱいにくしゃくしゃになるほど浮かべて遊び回っている。保護者である親は近くで見守っているものの特に何のアクションもない。
「僕達はついにここまで来てしまったんですね……」研究員が博士に問いかける。
「ああ…」思わせぶりな何かを匂わせながら博士は一旦言葉と動作を切った。


 ……ん?
 タイトルがおかしくないか?



Copyright © 2009 虎太郎 / 編集: 短編