第81期 #42

姉の首

 実験台に供物した。
 おとうとがあんまり言うので。なんて経緯にしてわたしはおとうとの責務にしてわたしの自由をポートフォリオからだらしなくオミットする。自由は責務の影らしい。
 おとうとはわたしの首をきり、いのちの補助機器につないだ。
 さあわたしが頭だけの頭人種です。人類史にて初出場です。
 わたしは棄てられずにあったスイカをいれる用のネットにいれられ天井からぶらさげられた。
「ところで?」
 おとうとは指で台にねそべったわたしの首下をしめした。
「もやして」
 おとうとにネクロ趣味や食人向に欲情されたらこわいとおもう。
 いやどうでもいいじゃない。そんな倒錯嗜好まじねえ。本体を喪ったことで思考の優位ました。
 ?
 本体はいまのこの首上じゃないのか。本体は本州という言葉に参照するかするとしたら本州をなくしたら本州はどこになるのか。ほんとうという言葉があかちゃけてきた。
 ほんとうにおもう行為がふえた。

 わたしは、頭オンリー化により、おとうとにとっては、姓という血液のにおいの鉄くさい家族固有の識別子のはずれた、さはさりながら姉の首というそまつなカタログ封入めいた紙ベースの情報のあけっぴろげでみだらな普遍的ありかたになったようだ。姓なくし性ひらう。ふふ。
 首だけだもの。しかたないよな。けどねえさんはくちがあるからしゃべれるんだぞ。
「むげにしないで」
「してねえ」
 スイカネットから花柄プリントのバッグにうつされる。きられた首の断面を下にして。バッグにはふたつの穴があけられている。まぶたの表皮をナイロンの色糸でバッグの裏布にぬいつけられる。無造作に。自分ひとりではうごけないわたしが中でずれないようにする工夫をほどこされる。
 おとうとはバッグを右肩にぶらさげて街へ。
 わたしは、穴から外をのぞきバッグがゆれるたび糸でまぶたがつっぱり痛い。でも気がねして言えない。人びとのからだがかしいでみえた。たくさんの鳥の影の群舞あるいは乱舞。
 ゆらがされて、そのうちに自分が糖分をとけださせつつうすらきえていくドロップスとニヤイコールになっていくようにおもわれる。
「頭だけでもねえさんの世界はかわらないでしょう。そもそも内省的で外交に活気がなかったのだから角度で言ったら2度程度の変化でしょう」
「ミサイルなら2度のちがいはおおきい」
 かばんの中で声がくぐもったのでこのわたしのユーモアはおとうとにつたわらない。
 ふうん。



Copyright © 2009 qbc / 編集: 短編