第81期 #21

怒るよね

バットで殴られて怒んない人なんて居るのかしらん。

と、思っていたけど案外、怒んない人が多い。寧ろ殴られた本人よりもその周りの人たちが怒る場合が多い。本人はそれどころじゃないって、僕なんか眼中にない様子だ。
じゃあと、試しに怒っていた人を殴ったら、その人たちは痛がって蹲るばっかりでさっきみたいに怒る様子がない。それどころか逃げ出しちゃったりする。
僕は正直ちょっと絶望していた。乱れきった現代日本って話は本当だったんだ。普通の反応の仕方をみんなが忘れている。
落胆した気分のまま、僕は紙パックのジュースを飲みながら前を歩いている女子高生の後頭部めがけてバットを下ろす。
ごすんと音がして女子高生はそのまま前にべしゃっと倒れた。

かと思いきや、べしゃっと言う音は紙パックのジュースを落とした音で、女子高生は膝をついただけだった。
栗色に染まった傷んだ髪が布のように翻って、血の垂れた顔で僕を般若のように睨み付けた。
「あにしやがんだてめえ!」
女子高生は頭から血を流しながら僕の横っ腹を革靴で蹴っ飛ばしてきた。
そうそう、そうだよ普通。ぼおっと納得していると、いつの間にか取り落としてしまったバットを女子高生は拾い上げ、僕に向かって大きく振りかぶった。

「そりゃ怒るよね。」
ごしゃん



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