第81期 #20
きそくが、ある。じぶんのげんこうをひとつもってはいれ。ただし、くうはくやくとうてん、だくてん、すてがな、ひらがな、ろくじゅうさんしゅるいのもじだけをつかい、すべてをいちじとかんさんしてせんじぴったりのげんこう。かんじやかたかな、いこくのもじはふきょかとする。
ちずをたどると、そこはしょてんというよりなにかのきねんひのようなたてものがあった。まどもまるみもなく、まるでしきちないをうめつくすためだけにつくられたのか、とおもうほど、しかくくてそっけない。
いりぐちはやすぶしんのじどうとびら。かぎのかわりにもっともやすいしへいをいちまい、よみとりきにいれるととびらがひらく。がいけんのいんしょうそのまま、ないめんもまったくかざりけがない、きのうび。おそろしくたかいてんじょうと、りんかくがぼやけてまったくしょうたいのみえないきょうれつなでんとう。
かべにすいちょくにたてかけらたいどうしきのはしご。いっぺんにつきいちだい、ごうけいよんだいがしほうのかべにとりついている。
にびいろのゆかのうえに、ひとりがけのいすとつくえとたいぷらいたがいちだい。たいぷらいたは、ろくじゅうさんもじのみがいんじされている。いすにこしかけ、まちがえないようにちゅういぶかくたいぷらいたをだけん。
ふるめかしい めかにかる のかんしょくがぶんしょうをよどみなくおとしこむ。ちょうどせんもじうちおわると、でんしおんがげじょうしました、とつげる。きんこのかぎがひらいたのだ。
そうだ。きんこだ。
かべ、かべ、かべ、かべ、すべてがきんこでおおわれている。ぎんこうにおいてあるかしきんことおなじしゅるいだろう。はしごをのぼる。とびおりればいのちをうしなうたかさへたっする。とちゅう、いくらかとびらがひらいたままのからっぽのきんこをみつけた。
みどりのあかりをつけて、わたしのきんこはわたしのほんをさしだした。ひょうしをめくると、さきほどうちこんだわたしのぶんしょうがいんさつされている。
わたしはようやく、じゅうのひゃくはちじゅうきゅうじょうのきんこのうち、ひとつがわたしのためによういされているのだとしる。