第80期 #26
学校に行く途中、都心の駅を通り抜けそれからまたバスに乗る。
都心の駅ではどれだけの人間がいるのだろうというほど人の大津波。
都心の駅では商品のサンプルやティッシュなどが配られている。
初めて箱ティッシュを配っている人を見た。
それも手に収まる小さいものではなく普通サイズ。
脇に挟まったティッシュ箱をこんなに見たことがない。
そのティッシュ箱に手を伸ばした理由は箱に書いてある言葉に興味を抱いた。
「あなたの人生をティッシュが助けます」
随分、大層なティッシュだ。
無料で配られているというのに。
鼻風邪だった私には助かったティッシュだったので早速開けた。
一枚ティッシュをとると小さな文字が書いてある。
「今日は帰って寝ないと風邪が酷くなる」と書いてある。
授業を受けようとパソコンの前に座っているが熱が出てきたようだ。
授業が始まると休講になったと知らせが入った。
ティッシュの言葉が気になって私は家に帰った。
家につく頃には体が重くすぐにパジャマに着替えて寝た。
次の日、連絡網で電話があり麻疹の流行でしばらく休校だという。
ティッシュの言葉が頭をよぎる。
持って帰ってきたティッシュを家で一度も使用していない。
一枚取ってみる。
やはり、文字が書いてある。
「病院は明日以降に行くこと、また、タクシーじゃないと後悔する」と書いてある。
次の日は立派な熱を出し動けなくなってまった。
さすがに高熱が酷く病院にいくことにしたが、親が送るといってくれたものの
ティッシュの言葉が気になりタクシーで向かった。
病院に着いたとき患者は誰もいなくてすぐ受診できた。
診療が終わり待合室に戻ると、父が青ざめてテレビを見ている。
「どうしたの?父ちゃん」
「見ろ。これ、車で通る裏道じゃないか?」
「本当だ」
テレビの映像は車で行く場合必ず使う道で起きた多重事故。
あのティッシュは本当かもしれない。
「それでタクシーと言ったのか」
「うん」
「そのティッシュはどうしたんだ?」
「貰ったの。駅で配ってて」
「家にあるのか?」
「うん」
家に帰り父が見たいというので見せると一枚取った。
「企画原案の資料を完成させろ。谷口部長を信じるな。裏切りが待っている。」
と書いてある。
「谷口部長って人いるの?」
「あぁ、企画を決めている最中でまだ完成させなくていいといわれた」
父はパソコンを取り出し仕事をし始めた。
私も一枚、取ってみた。
「あと一日を有意義に」
これは、どういう意味なのだろう。