第80期 #24

じいさんと乙姫

「花咲かぬじいさん」
とっても果物の好きなお爺さんがいました。すいかや桃、柿などを
食べては、せっせとその種を自分の畑にまきました。
 ところが、いつになってもその芽が出ません。しかし、何ヶ月か経ったころ、やっと愛しい芽が出てきました。
 おじいさんは喜んで、昔話にちなんで、火鉢の灰をまいてあげました。
 するとどうでしょう、やっと育った芽は一夜のうちに全滅してしまいました。
おじいさんは落胆のあまり寝込んでしまいました。
 これを空から見ていた花の精霊たちが「こんなに頑張ったのにかわいそう」だと言って、
畑に魔法をかけてくれました。するとどうでしょう。やっとこ起きだしたおじいさんの畑には、なすや、きゅうり、ごぼう、等が育っていました。
「乙姫様」
海の底の竜宮城という所に、それはそれは性質の悪い乙姫様という人がいました。
魚や亀に情けをかけてくれる、心優しい清い人の魂が大好物でした。
この日も、悪頭の亀が純粋な心の太郎という少年を連れてきました。
乙姫様はしてやったりと「ニヤット」笑い7日間。
太郎に海の幸のごちそうや、様々な魚の舞で太郎を楽しませました。
そして、太郎が少し眠りについたとき、乙姫様は1日で10年分の太郎の生気を吸い取ったのです。
何も知らぬ太郎は7日間の礼を言い、お土産の玉手箱をもらい、家に帰りました。
さて、お土産は何かと玉手箱を開けると、乙姫様に吸い取られた自分の生気のかすが噴出し、あっという間におじいさんになりました。



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