第79期 #4

ロマンチスト

結婚して一年が過ぎた。夫とは見合い結婚で、なぜか知り合って3ヶ月で結婚してしまった。結婚はあせっていただろう。35歳だったし。自分でもわかっている。今まで恋愛もしたし、見合いも何回かした。でも、どれもそこそこで終わってしまった。夫を選んで、しかもあっという間に結婚した理由は自分でもわからない。
ともかく結婚したのだ。世間一般では幸せというのだろう。
独身の頃は、精一杯仕事をして、帰りにお酒を飲むのが好きだった。こんなに楽しいのなら、結婚しなくていい。
そういう思いを楽しんでいた。
だが、結婚してしまった。
自分でも本当にわからなかったのだ。ただ、なんとなく流されてみた。仕事では収入も、地位もそれなりのものを得ていた。
私はそれを簡単に捨てた。
結婚して一年、久しぶりにワインを飲んだ。
夫は好んでお酒を飲まない。今日はたまたま夕食に牛肉のステーキを出したため、私に付き合った。美味しかった。久しぶりに酔いも味わった。
酔ったので、なんとなく夫をいじってみたくなった。顔をなでたり、くすぐったり、私が擦り寄ってみたり。夫はそのたびに言う。
「なに?」
顔は笑っている。
「さあ。なんでだろう」
私は答える。
意味なんてない。いじってみたくなった本能に従っただけ。
一年たって気づいた。
結婚することって、本能に基づいた行動だったんだ。私はアフリカのヒョウと同じくらい、非常に本能に忠実な動物といえる。
私は、夫の知らないところはまだまだたくさんあると思っている。酔った顔を夫に見せたのはこれが初めて。
夫は何か勘違いで私と結婚したかのように思う。

夫は私に何を求めて、何を想像して結婚したのか?
わかっているのは、私の夫は、究極のロマンチストといえること。
私と結婚するなんて、ちょっとおかしいんじゃないの?
でも、いまはただ、満ち足りた、ハートの奥底からわいてくる快感のなか眠りたい。

わるくないものじゃない?結婚。







Copyright © 2009 藤澤マイコ / 編集: 短編