第78期 #9
坂道を上がると、桜の並木が視界に入り、舞い散れる幾千万の花弁が私の心を奪っていった。もう八年だ、ここに来てからもう八年が過ぎた。この八年間、私は彼女への想いが一秒たりども消えていない。幾たびの夜、私が涙をしながら夢から目覚め、永遠欠けないの月の下で、彼女の笑顔を思いながらほんやりと朝陽を迎える。涙の味はもはや慣れていた。でも、その孤独さだけがどうなに時間が経っても慣れないんだ!
「どうして私が彼女へのその想いを口にしてなっかたのか」
桜の海に歩いてゆく、私はそう呟いた。
もし、その夕暮れ、私が自分の思いを彼女に伝えられるのなら、このような状況に成れないのかもしれない!町を出て、遠いここに来て、天涯孤独を味わうままで一生を尽す…
私の人生なんか、もう意味がない、ここの桜だけが僕に一瞬の気楽を与える。この道を抜けた後、無限の孤独だけが僕を待っていた。それでも、ここの桜が大好き。
……
「サカ…く……」
何かが後ろから…よく聞こえないが…
「サカキくん…」
この声…この声は……私は答えることも振り返ることも出来ず、ただ桜の中で立ち尽くす、涙は決潰のように……