第78期 #19
「先生、私、痩せられますか?」
ダイエットに悩んでいたシャルロッテ婦人。
彼女が思いあまって相談した友人に紹介された医者でのヒトコマである。
「大丈夫です。私の言いつけを完璧に守っていただいたら、100%痩せられます」
医者は、胸をドン!と叩き、自信満々で答えた。
「わかりました! それでは私は何をすればいいですか?」
婦人の問いかけに、医者は噛んで含めるように説明した。
「では婦人、以下の3つを実践してください。一つ、食事は3食摂る事」
「3食、食べてもいいんですか?」
「はい、ただし炭水化物は摂らない事です」
「炭水化物、ですか……」
「ええ、ですから、パンやパスタは控えてください。フルーツは摂ってもいいですが、量は控えて下さい」
「あ、はい…わかりました」
「そして3つ目、夕方の6時以降は水分以外のものは摂らない事。守れますか?」
「はい! 頑張ります!」
婦人は、覚悟にも似た表情でうなずいた。
それから数ヶ月、友人は再び婦人のもとを訪れた。しかし、あれから医者の言いつけを守っているという報告を受けていたのにもかかわらず、婦人はまったく痩せていなかったのだ。
「どうして痩せないのかしら……」
そう呟く婦人の悲しそうな顔をみて友人は同情した。
「ま、まあ……きっと、これから効果が現れるのだと思うわ? ……もう少し、気長にやってみたら?」
「そうね。。。ありがとう。頑張るわ?」
婦人は、少し元気を取り戻したように、ほほ笑んだ。
「あ、そろそろ夕食の時間だわ? ねえ、うちで夕食食べていかない?」
「でも、あなたダイエットしているのに私だけ食べるの悪いわ」
「大丈夫、3食きちんと食べるという決まりだから」
婦人はメイドを呼ぶ。ほどなく、二人の前に分厚いステーキが運ばれた。
「炭水化物は摂っちゃだめだから、毎日お肉しか食べてないわ」
婦人は、そう言いつつ、ぶ厚いステーキにナイフを入れ、モリモリと口へ運んだ。
「あ、いけない! もう少しで6時だわ? ちょっと!」
再び婦人はパンパンと手を叩いた。すぐさまメイドがケーキを持ってやってきた。
「6時以降は何も食べちゃいけないから、あと10分で食べないと……」
婦人は、ケーキを口にほおばった。
「ボーンボーン……」
やがて時計は6時を指した。
「6時以降は、水分しか摂っちゃいけないのよねえ……夜が長く感じるわ。。。ダイエットってほんとに辛いのよねえ……」
婦人はそう言って、ワインのコルクを抜いた。