第77期 #30

金子口輪社

「ミヨとタケの熱愛が、発覚したらしいな」
 金子くんは、身近な人たちのことに、熱愛、とか、週刊誌やワイドショーみたいな、表現をつかって、話すので、まるで、ぼくらのいるサークルが、芸能界みたいに、おもえてきて、なんだか、自分たちが有名人になった、気がして、なんだか、くすぐったく、なる。だから、きっと、言葉がとても、上手なんだと、ぼくは、勝手なことでございますが、おもいます。
 でも、金子くんがそのワザを、駆使、するのは、主に、おんなの子たちの、ためだった。金子くんは、おんなの子と、じゃれあうのが、とても、好きだった。サークルの、おんなの子の、だれかしらと、気づくといつも、ふかい仲に、なっていた。もう大学生なんだから、別に構いや、しないけれど。金子くんが、ひとたび、くちぶえふけば、おんなの子たちが、ぞろぞろ、ついてくる。などとは、云いすぎ、かもしれない、が。
 ある日、金子くんが、お酒をちびりとやると、目つきが変わって、こう、云った。
「ここは、俺の狩猟場だからな。だれにも、あらさせないぜ」
 その話が、サークルの、おんなの子たちに、もれた。
 金子くんは、つぎからつぎへと、サークルの中で、いわゆる、狩り、をしていたので、もしかして自分は、金子くんの、えものだったのではなかったかしら、と心あたりのある、おんなの子たちは、たくさん、いらっしゃった。
「「「わたしたちは、ノウサギ、ではない」」」
 会議で、金子くんを、サークルから、除名されることが、はなし、あわれた。でも、金子くんは、場をもりたてる達人、だったし、大間のマグロの刺身が、一〇〇〇円、ぽっきりでたべられるお店、も知っていた。だからサークルをやめさせるわけ、には、いかなかった。
「「「わたしたちは、オジロワシでも、ない」」」
 愛している、とか、好きだ、とか、別れたあとになってみんな、それが、うそだ、と気づく。金子くんは、この状況のことを、滅愛、と表現した。だけど、滅愛、と表現したところで、なにがかわるわけでも、ない。けれども、滅愛、と聞くと、そのめずらしいことばに、うん、そうだな、そのとおりだ滅愛だ、と、サークルのだれもが、うたがいもなく、うなずく。
 ひとはこうやってだまされる。
 さくらの、季節になると、サークルに、新しいおんなの子がやってくる。おんなの子たちに、金子にはちかづくな、とおしえるのが、さいしょの、ぼくたちの、仕事だ。



Copyright © 2009 qbc / 編集: 短編