第77期 #2
ハイヒールでケツがでかい気取った女
頭も服も靴も、ボロボロなのに、姿勢だけ無駄にいい男
ケータイ依存症の化粧が濃い、女子高生
それについてくライオンみたいな頭の男子高生
ピーチクパーチク騒ぐ、彼氏居なさそうな、ブスな中学生
男も女も関係なく走りまわっている小学生。
俺はベンチに座って、そうやって心の中で毒をはく、まったくもって臆病者である
それでもいい、臆病者でも生きていけるのだから
俺は空を見上げ、歌った「てーのひらを太陽にすかしてみーれーばーまーっかに流れるぼくのちしおー」
なんだか無性に歌いたくなったのだ、女子高生が変な顔して俺を見た後、公園の中を通るのを断念していた
「ははっ」
俺は笑った
ニコニコとして、頭をカクンカクン揺らしながらまだ少年と呼ぶには、早い男の子が、俺に駆け寄る
「おとーしゃん、ちょーちょ」
そういって息子が手を開くと蝶々が顔を出す
「ん、すごいな」
「へへへー」
俺はちょっとした好奇心で、嬉しそうに笑う息子の目の前で、蝶々の羽を毟った、息子はどんな反応をするだろう
泣くだろうか
笑うだろうか
怒るだろうか
羽はあと一枚、触角を毟る、足を毟る、そのたびに息子の目が濁っていく
そんな気が俺にはした
全てをばらばらにした後ベンチへと、蝶々を並べた、最初蝶々の体はウニョウニョと動いていたがしばらくして、動かなくなった。
「しんだ?」
「死んだ」
俺と息子の会話はこれ以上ないと思い、俺は立ち上がった
だが息子は濁った目で俺を見て「ボロボロちょーちょ汚い…ね」
俺はこのとき、息子を一人の人間として観察したいと思った
この子の目がこれから、どんなふうに濁っていくのかを見たいと思った。