第77期 #11

ある雨の日

それは、ある雨の日。
下校中のバスの中。
もしかして、ここは終点・・・?いや、違う。
他にお客さんもいれば、バスもまだ走り続けている。
なのに、何かが違う。私を、錯覚させる何かがある・・・。
多分、それは窓ガラス。
外で降り続く雨のせいで窓ガラスは曇っている。
外が見えない。バスの中はひんやりとしていて、音がない。
この窓ガラスが、私を錯覚させるのだろう。
―窓ってこんなに大きかったっけ?
思わず呟いてみる。いつもより断然バスの中が広い。
というより、私が小さい。
気がつくと、そこはいつもの私が下車するバス停。
雨も上がり始めていた。



Copyright © 2009 水瑚 / 編集: 短編