第77期 #10
「貴方、マンホールとツクツクボーシではどちらが好き?」
やっぱり変だ。こんなの。
「マンホールです」
「へえ、変ってるわねえ」
どう考えてもこっちのセリフだ。
「じゃ、18割る5は?」
なんなんだ。
「3.6」
「17×9」
「……153」
「じゃあ、11と2ではどちらに意味を感じる?」
ああ、くそ。
「11にはかなり作為的なものを感じます」
「だよねぇ」
畜生。なにがだよねぇ、だ。一体全体なんだってんだ。
「それで、昨日は流れ星を見たの?それとも晩御飯が鍋だったのかしら?」
……。
「流れ星なんて見てないし、昨日の夕飯はカレーでした」
「あら残念。じゃあ貴方、童貞なの?それとも、処女?」
ふざけてる。やっぱり、ふざけている。
「童貞じゃありません」
「ふうん」
「あの、もういいですか」
「いえ、まだまだ質問は残ってます」
彼女はそう言うと、B5サイズの資料のようなものを抱えて持ってきた。ざっと見ただけでも千枚はくだらない。
俺は、文句を言いたくても、悪態を付きたくてもなぜか口から出ない言葉に悶々としながらこの質問に答えていかなければならないと悟った時、
いっそ殺して欲しいと思った。
「次の質問ね」
彼女は口を開いた。