第76期 #17

目覚めたとき

山根俊郎は、重い頭を振った。
目覚めた時、一瞬なにが起きたのか?判らなかった。
ここは、どこなのか?いつなのか?なぜここにいるのか?頭の中がパニックになっていた。微かに憶えているのは昨日、谷口壮一郎と飲みにでかけたところと飲み屋で女と合った。その後が思い出せない。ただ、楽しかった記憶が蘇る。

それにしても、今自分が居る場所は、なんとも得体の知れない空間だ。ベットに上半身だけ起こした。起きる時にバランスを崩しそうになる。支える手がベットに沈みそうだ。広さは、20畳ぐらいはありそうだ。天井は、高く広々した感じがある。正面には、大きな水槽があり熱帯魚が泳いでいる。水槽はとても大きい。何という大きさだ。特別に注文しないとないくらいの水槽なのだ。泳いでいる熱帯魚も小学校の頃見た図鑑にでてきそうなものばかりだ。熱帯魚か。
左側には、らせん階段がせり上がって頭上に伸びている。その先は薄暗くて見えない。らせん階段の横には、観葉植物がらせん階段に絡みつきそうな感じで伸びている。植物の名前は思い出せない、とにかく大きい葉が印象的だ。部屋の出口は、らせん階段にはないようだ。その位置から手前の白い机の上にパソコンが置かれている。
花柄のカーテンレース越しにささやかな明りが差込んでいる。
懐かしい風景。

「おはよう」綺麗な声。懐かしい声。
女の声。昨日の女の人?「おはよ」俊郎は思わず答えてしまった。どこかで聞いた声で記憶をスクロールする。昨日の女。
「ココは何処なんだ。」
女は「あなたの居場所よ」と答えた。
俊郎の前には水槽の中の熱帯魚が泳いでいる。
女は、目の前の姿は見えない、まさか魚が話しかけているのか。馬鹿げている思考が麻痺している。夢か。
そうだ、夢なんだ。昨日飲み過ぎて今は夢を見ている。
俊郎は「居場所って、どういうこと」と聞いた。
「・・・・」答えない。やっぱり、夢だと俊郎思った。ふと無性に、昨日の女に会いたくなった。

「君に会いたい」と俊郎は言った。カーテンが開いて女が現れた。「ようこそ私の家へ」と女は微笑んだ。
女とは昨日初めて会ったが何年も何十年も前から知っているような感じがする。暖かい気持ち。

「君が僕の居場所?」



Copyright © 2009 芥川ひろむ / 編集: 短編