第75期 #19

積み木の空とウロボロス

 積み木をしていると、いつも邪魔をされた。
 けしてこの空には届かないのだと、バベルを思わされるかのように、僕の積み木は音を立てて崩れ去った。
 崩れるから、僕はまたしても、仕方なく積み木を持ってきて積み上げる。
 積み木は崩れたら砕けて、使い物にならなくなった。
 また空にまで届きそうなくらいに高くなると。

 ガチャーン。

 邪魔をされた。
 お前たちには手を伸ばす資格もないと言っているのか。僕の積み木は、僕の涙と共に地面に落ちた。
 何度やっても、邪魔をされた。
「何でキミは邪魔をするの?」
 僕が聞いても、見当違いの答えしか返ってこない。
「それはお前が悪いからさ」
 積み木の何が悪いのさ。
 誰だって積み木を積み上げるならば、高くしようと思うだろ。それの何がいけないのさ。
 僕は、彼らに負けずに、何度も、何度も、積み木を積み上げた。
 壊されて。
 壊されて。
 それでも、僕は積み上げたんだ。
 だけど、ついには手足は動かなくなって、言うことを聞いてくれないようになった。
「親を残して死んだ奴はそうなる。積み上げられた石はお前の罪の象徴。重い石は罪の重みで、石の高さはお前の罰の距離だと思え。ゴールは空だ。しかし、空になど届きはしない。俺たちが金棒を振るうからさ。悪かったな、これも仕事だ。いや、謝る必要はないか。悪いのは、お前なんだから」
 鬼は、笑わずに言った。
 積み木は金棒で崩れ去り、僕はまた歩いて、積み木を探しに行く。
 いつ終わるか分からないけど、いつ、までも。



Copyright © 2008 蒼ノ下雷太郎 / 編集: 短編