第74期 #22
太陽にこの身が焼かれるようで、僕は晴れの日が好きになれなかった。その日も、外から雨粒が屋根をたたく音が聞こえてこなければカーテンを開けずに過ごそうと決めていた。
タンタンシャラシャラと屋根がうるさくて、早めに起きてしまった僕はカーテンに手をかけた。
雲に遮られた太陽はまだ地平線の近くをうろついている。
「早く起きすぎたな。」
小さくつぶやいて、それからしばらく、久しぶりに窓からの風景を楽しむ事にした。
ザーザーと雨はやむ気配がない。しばらくぼんやりと雨が作るストライプを眺めていた。
「キャハハ!」外から物音が聞こえ、慌てて窓から2,3歩離れる。
カポカポと楽しそうに長靴を鳴らしながら、小さな子供が一人、窓の前を通り過ぎた。まだ走ることを覚えたばかりなのか、トテトテと不安定にその体を動かしている。この子の笑い声だったのか。かわいい笑顔だ。食べちゃいたいくらいに。
あ、危ない。
ズシャッ
走ることにまだ慣れてない体は、楽しさについて行けなかった。笑顔がじわじわと泣き顔に変わる。すりむいて膝から血もにじんでる。大丈夫かな。僕はつばを飲み込んだ。
泣き顔になっても、その子は泣かなかった。泣かずにまた走り出してどこかへ消えた。しばらく窓の前で待っていたが、お母さんは通らなかった。
あたりはだんだんと暗くなってきた。
あの子はどこに行ったかな。探さなきゃ。
あたりは暗くなった。僕の一日が始まる。
僕は吸血鬼。朝ご飯は食べちゃいたいくらいにかわいいあの子。