第74期 #15

大森ヨシユキの恋

大森くんは社内ではイケメンで通ってるらしい。“タッキー”と呼ばれてるとか。僕には“キモかわいい”芸人の片方にしか見えないのだが。

「全然関係ない話なんですけど」と、納品が終わった大森くんが話しかけてきた。いつもはエロいDVDを買った話や、休んでばかりいる同僚のひとみちゃんの愚痴なんだが今日は何やら目が真剣だ。
聞いてみると大学のサークルの後輩にタイプの子がいるという。OGとして何度か飲み会に出ていて目を付けたらしい。誘ったのか聞いてみると食事には行ったがこれからどうすればいいか考えてるみたいだ。
「告白してもいいですかね?」
中学生じゃないんだから…
何度かデートをして、自然な形で「僕たち付き合ってるんだよね?」って言ってみろ。彼女は首を縦に振るはずだ。
大森くんは足早に営業所に戻っていった。受領伝票を忘れたまま。

「全然関係ない話なんですけど」いつも以上に“キモい”笑顔で大森くんは話し出した。あれからお台場に行き、水族館に行き、ディズニーシーに行ったそうだ。昨日帰り際に駅で言われたように言ってみたら即OK。嬉しくてその場でキスしたってさ。
さらに“キモい”笑顔を全開にして
「いいラブホテル知りません?」



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