第74期 #10
プロローグ
少し、さみしい。
あなたが気づいてくれなくて。
でも、それもあなたの好きなところ。
私があなたを好きになった理由の一つ。
あなたが、私を好きかわからないけど、私は……
#彼と彼女#
私があなたに出合ったのは、中学に入学したとき。
同じ部活、同じクラスになった時に、あなたと出会ったそのときから、
私は変わった。
あなたのことを考えるようになったのは、高校に入ってから。
横に来るたびに、胸がドキドキするのが分かる。
だから、部活でどこかに遠征するとき、あなたと一緒にいられるのがうれしかった。
だから、みんなが待ち合わせしたとき、私も一緒にその場にいた。
10時5分ちょっと前。
待ち合わせ場所には、彼以外の人がそろっていた。
私たちは、その場で待った。
10時になった。
ちょうど、彼が来たところだった。
彼は、友人たちと一緒にいた。
私は、そんな彼の後ろを少し離れて歩いていた。
ふと、並木道で立ち止まり、彼の遠くなりゆく背中を見た。
(私って、彼の何なんだろう…友達、なのかな……)
10時5分ちょっと後、私は、彼のことが好きだということに初めて気づいた。
遠くなりゆく彼の背中は、広くて、優しそうだった。
(私に、彼を追いかける勇気ってあるのかな…)
冷静になって考えてみた。
少し経ってから、遠くから見ていただけの私は、突然駆けだした。
「あ、あの!」
彼は振り返った。
私は、一気に言った。
「好きです!ずっと、好きでした!」
彼は、少し迷ってから、答えた。
「…わかった。だったら、付き合おうよ」
彼は、気さくに笑って答えた。
「ほんとに好きだったら、構わないだろ?」
私は、徐々に歪み始める視界の中、何回もうなづくしかなかった。
エピローグ
10時5分ちょっと前、私は彼と待ち合わせをしていた。
そのとき、彼は来た。
「…じゃあ、行こうか」
「うん」
私たちは、横並びになって歩き出した。