第73期 #20

青い空

ふと空を見上げた。
何年もの間、僕は空を見上げたことなどなかった。思い出すのは、とっても小さい頃の記憶だし、遠い遠い記憶だった。
その数秒後、僕は力いっぱいにツルハシを振り上げた。
なんでなんだろう。
なんで、僕は力いっぱいにツルハシを振り上げているんだろう。
考えても答えは見つからない。理由は、ただ一つだけだった。
夢と向き合うはずだったのに。
「人生は甘くないぞ」
身にしみる言葉だと思う。いや、現実的には、今は思う。が正しい言い方だと言える。僕は甘い。
「勉強しないと将来がないぞ」
将来って考えていなかった。いや、その時は、そう思った。が間違いだったかも知れない。
「将来なんて、ちょろいもんさ。」
都会に出れば、将来が見える。
都会に出れは、人生が変わる。
都会に出れば、僕はかわる。

「おい、しっかりやれ」
僕は、叱られた。
今日始めて会ったオジサンに叱られて、穴掘りに将来があるんだろうか。
力いっぱいにツルハシを振り下げた。地球に立ち向かっている僕がそこにいるんだから格好いいのかも。
僕の上には、青い空が広がっているんだ。
昔から、空はかわってないんだけどな。

「カア、カア」
カラスが僕に何か言った。



Copyright © 2008 芥川ひろむ / 編集: 短編