第73期 #18

バイバイありがとう さっよオナラ〜♪

「全部赦してほしいんすよね。なんだろ〜、生まれて来てごめんなさいへの回答とかそういうんじゃなくってね、論理とか理屈とか抜きでさ、バビョイ〜ンと赦されたいんすよ。しょうもないこと考えるの飽きちゃってさ〜」
 うおぉ……。このご時世に街なんか平気で歩いちゃった上に職質されて拘置されて、さらに警官の慈悲を勝ち得れなくて訳わからん罪着せられて、とうとう裁判まで来ちゃった最後の被告人席でそんなことほざくのか、お前。すっげえなあ。そのステップのうちどこか一つでいいから知性を働かせれば元に戻れたのに、どんだけだよ。何があったんだ疋田、つって多分何もなかったんだろうなあ。高校で世話になった恩返しに、弁護士つけたり根回ししたりしてやったけど、そういうことじゃなかったんだなあ。
「では、被告人は検察の訴えを全面的に認めるのですね?」
 んなわきゃねえって。
「はいはいはい、認めるっていうか、うん、認めますよね。やっぱ、自分から始めないとダメっすもんね。まあ募金とかさ、自分が受ける側になったことないすけど、コンビニのレジに箱があったら入れますよ。何月分の募金は何円でしたーって書いててね、ああ、ぼくが入れた50円がなかったらこの額マイナス50円にしかなんなかったんだ〜って思ったら、嬉しくないっすか?」
 いやいや、おめえはもうその募金受ける側のギリギリ崖っぷちに居んだよ。それ以上行ったら、そういうのとは縁遠い世界に旅立っちゃうの。わかってねえなあ。考えるのやめすぎ。今さら持ちつ持たれつ精神をアピールしても意味ねえ。ルンプロが募金してどうすんだよ。
「弁護人から、何かありますか?」
 ねえだろ。ほら、耳くそほじってんぞ。でも、しょうがねえわ。大枚叩いて雇ったけど、あんたは悪くねえよ。疋田がやる気なすぎんだ。はあ。ヤマザナドゥでも赦さねえよな、こんなもん。カッカッ!
 略式の死刑がその場で行なわれて閉廷。疋田の親に挨拶を済ませて、駅前まで車を飛ばす。喫茶店に入って爆睡。閉店間際、ウエイトレスに起こされたんで、募金箱はねえのかと訊いたら、ねえってさ。ここは友人の遺志を継いで募金でもして綺麗に締めて、何となく崇高な雰囲気にしときゃ逸話なのに、ねえのかよ。しょうがねえから、俺はディックを取り出してウエイトレスにしゃぶれと命じた。お前なんざ下ネタで十分なんだよ。さいなら、疋田君。



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