第71期 #12

約束

私は桃瀬雛乃-モモセヒナノ-料理がとにかく下手。もう高1なのに
わたしのまずい料理を食べてくれているのは友達の高島文都-タカシマフミト-
私が好きな人にお弁当を作りたいと言ったら
「味見してやる」って言ってくれた。
でも、上達しないみたいでなかなか「合格」の一言が聞けない

「よし!今日こそ…あ、文都!」
「おっ!まずい弁当屋の登場だ」
「まずい弁当屋って言うな!!」
「だってまずいし」
「ツッ…言い返せないし…でも、今日はうまいから☆」
「信じらんねぇな」
「まぁ食えって」
「ん!入れすぎ!!」
「どうよ?」
「…うもぇ」
「は?なに?」
「うめぇよ!これ!!!」
「ありがとう☆やったぁぁあ!」

その瞬間私は初めての感触を覚えた。

―――――――――えっ、キス?

「好きだ。一生懸命頑張っている雛とうまい料理を作る雛が」
「……文都」
「俺のために毎日そのうまい弁当を作ってくれないか」
「……うん、いいよ。たまにまずくても怒らないでね」
「わかんねぇ。」
「じゃ、やだ」
「嘘だよ。怒るわけないじゃん。」
「……うん」
「雛?」
「ごめん……」
「泣くなよ」

すごく温かくて安心できた。
文都の胸の中

1ヶ月後
「はーいお弁当」
「うん」
「なにどうかした?」
「俺…転校するんだ」
「どこに?」
「沖縄に」
「沖縄!?遠いね。」
「うん。もう別れよ。」
「なんで?やだよ。待ってる。戻ってくるんでしょう?」
「うん。いつかね」
「待ってる。ずっと」
「………分かったよ。待ってて」

2週間後
「文都、待ってるよ。あたし、ずっと」
「うん。連絡するから」
「いっぱいしてね!!」
「するから。」
「最後に抱きしめて」
「うん」
やっぱり、文都の胸の中は温かかった
でも少し、震えていた。

10年後
私は、テレビを見ていた。
「臨時ニュースです!スーパーで事件が発生しました」
「物騒ね」
「被害者は高島文都さん26歳です。山之内病院に搬送されました」
私は病院に向かった
「あ、雛乃ちゃん…」
「お母さん」
「文都に会ってあげて」
私が病室に入った時にはもう白くなっていた。
「ふみと…あたし待ってたんだよ…」
「文都…返事してよ…」
「無理だよね」
「大好きだよ。ずっと。上で待っててね?約束だよ?」
「ばいばい。文都」
「なんか独り言じゃん。あたし」
文都は逝ってしまった。先に
私は文都と会うのが先延ばしになってしまった。
でも、私が約束守ってたから、文都も守ってくれると思う。
きっと。

                    完



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