第70期 #5
夏は良い季節ではあるが、溢れんばかりに湧き出す性欲の暴れようにはまったくもってうんざりする。それが夏の風物詩と言ってしまえば確かにそうなのだろうが、しかしやはり濃厚な欲望を眼前にすると顔を引きつらせてしまうものである。
「愛してるわよん」と、勉強机に居座るミニチュア七福神さんに語りかける。それからなんだかイライラしてきて、「このやろう、ニヤニヤしてんじゃねえよ」と怒鳴りつける。でもミニチュア七福神の皆さんに拳をあげたり、唾をかけたりはしない。なんだか、そういう天罰みたいなものに妙に敏感になってしまうのだ、夏という季節は。
「ええい、じゃかあしいわ」と、沈黙の中叫び、七福神の皆さんの後ろにあるピサの斜塔の模型を手に取り床に叩きつける。ううむ、これは性欲の一種であるか。