第70期 #4
「王様、白髪が・・・」
「・・・・・そうですか、もうそんな時期ですかか」
「まだあまりに早過ぎます!」
「いいから、いいから早く皆に伝えなさい。そして明日の朝までに準備させなさい。」
「かしこまりました。しかし本当に・・・」
「私も一度は通った道です。立場は違いましたけどね。これ以上の衰えを見せるわけにはいきません。」
「はい・・・」
「たしかにもう少し生きたいとは思いますが衰退した実例もいくらかありますからやはり国民が一番大事です。」
丘の上には小屋が建てられ、小屋の周りには幾百の兵士が配備されました。私はその小屋の中でその時を待ちます。
「さて、どのような方がここに来るのでしょう。できれば一度で来てほしいものです。どんなかたちであれ人が傷つくのは私は嫌です。」
こんなことをいくら呟いても私にはどうすることもできないことはわかっていました。私には何も出来ない。
金属と金属がぶつかる音がすこしずつ近づいてくるのがわかります。
「どうかこのような事がもう行われませんように。」
私はそう呟きましたが、本当にそう思ったかはわかりませんでした。
乱暴に扉が開かれましたた。入ってきた一人の男はその扉を丁寧を閉めました。男の顔はよく見えませんでしたが兵士とは違う甲冑を身に纏っていたのでこの男で間違いないことはすぐにわかりました。私は準備してあった剣を手にしました。
「王様、私は王様が自然死すると国が衰退するだなんて信じたくありません。」
驚きました。まさかそんな事を言われるだなんて。
「だから王様は逃げてください。」
「しかし・・・なにか証拠と言うかその・・・」
「大丈夫です。私がどうにかします。」
私は迷いました。本当にこの男を信じていいのか。私はいつの間にか手にした剣を置いていました。私は信じたいのかこの男を。
「わかりました。こちら側から外に出れば兵士はいません。私はいきます。あなたの為にも決して見つからないように。」
「はい。」
しかし私がそこで男に背を向けたのは間違いでした。
「信じたくはないですが本当に国が衰退したら困ります。私は王様がかつて剣術の達人と謳われていたことも知っています。」
そういうことか
私と同じだったなんて少しも気づきませんでした。不思議なものです。
翌年は豊饒を迎えた。