第7期 #12

無風状態


 昔の友達から久しぶりに電子メールが届いていた。ちょうど関東に台風がやってこようとしていた時のことだ。「君はきっと台風の目の中にいるのでしょう」とそこには書いてあった。「君は無風状態の中で涼しげな顔をしているけど、君の周りではものすごい嵐が巻き起こり、たくさんの人がそれに巻き込まれているのでしょう」と。
 文章はさらにこう続いていた。私も無風状態の中にいます。でも私の場合は周囲も無風状態です。特に面白いことや何かすごいことが起こったりはしません。でもそれなりに楽しく暮らしています・・・。
 彼女は今、関西の、それほど有名ではない私立大学で事務の仕事をしている。僕はまだ彼女に返事を書いていない。



Copyright © 2003 戸田一樹 / 編集: 短編