第68期 #16

家庭教師

 しくじった。一七時四六分。ぼくの部屋でのこと。
 女の家庭教師。先生は言う。机のパソコンの前の椅子に座り足を組みながら。
「ばつのわるい顔」
「先生は楽しそうです」
「ええ心から」
 カーテンは閉じられている。部屋の電灯も消してある。モニタから放たれる光だけが先生の横顔を照らしていた。
 先生がモニタを指差す。
「この画面見てどう?」
「別に」
 ぼくはモニタから目を逸らす。
 今日の授業は中止のはずだった。先生の都合で。昨日に連絡が来た。けど学校から帰ったら先生がいる。
 普段はパソコンはけしてある。ただ今日は学校に行っている間に動画をダウンロードするため起動しっぱなしだった。しかもぼくのアカウントでログインしたまま。ハードディスクの中身を、先生に見られた。
 先生は顎先をモニタに向けた。先生の顎のカーヴは鋭い。
「インストールされてた。成人ゲームが」
 モニタには女性のグラフィックが映っている。煌武院悠陽というキャラクタだ。全裸。口唇愛撫中だ。
「友達に借りました」
「言って。いまやってるタイトルぜんぶ」
 ぼくは答えた。マブラヴにマブラヴサプリメントにマブラヴオルタネイティヴにマブラヴオルタードフェイブル。
「このシリーズだいすき?」
「はい」
「これでハァハァするの?」
「ハァハァ?」
「具体的に言ってほしい?」
「ハァハァで構いません」
 先生は立ち上がった。ぼくの家庭教師は中原麻衣さんだ。本業は大人気ゲーム「ひぐらしのなく頃に」の竜宮レナ役などを演じている美人声優。ぼくはまいたんの信者だから大企業役員の父さんの権力でぼくの先生になってもらった。

 先生はぼくを床に四つん這いにさせた。ずぼんもパンツも脱がされていた。
 先生は右手に赤く長い棒状の物体を持っている。
 ぼくは訊ねた。
「カラーバット?」
「ええ」
「どうしてそんなものが」
「お仕置きだから」
 先生が観覧車のようにおおきく腕をまわす。風船が破裂する時の音。直後に精神と体に痛み。
「ほんとはゲームに夢中のくせして、どうして私のファンなんてウソついたのかな? かな?」
 かな。かな。それは竜宮レナの特徴的な語尾だった。
 ああまいたん嫉妬してんだ。しかもレナ声でぼくの尻ぶったたいてくれて。肉の芯奥が熱い。ほおぺたも熱い。
 先生が言った。
「涙?」
「ぁ」
「涙流れてるよ」
「うふぁ」
「そんなに痛かったのかな? かな?」
 違うよまいたん。夢が実現したからだよ。
(脳内実話)



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