第65期 #24

未来の乗りかた

近所のアミューズメントパークで、ちょっと変わったアトラクションを見つけた青年達は
興味と好奇心で、その場に足を踏み入れた。

1人の青年ヒロキの視界に映るのは、いくつか並べられた扉が付いた球体型の物体。
側においてある案内板に近づいて見ると、それには「未来の乗りかた」と書いてあった。

”未来の乗りかた
1.扉を開けて、中のシートに座り、シートベルトをして下さい。
2.画面の中から 好きな『テーマ』を選び、『決定』ボタンを押して下さい。
選んだ『テーマ』が、あなたの未来になります。
3.コンプリートの条件は、あなたが選んだ『テーマ』を叶えられたり、得られることです。
あなたが死んでしまったり、諦めてしまった場合はコンプリートできません。
また、コンプリートを目指す間には、様々な『誘惑』があなたに近づいてきますが
その誘惑に負けてもコンプリートできません。
さあ、未来を体感して下さい!”

それを読んだヒロキは、さっそく側にある球体に駆け寄った。
付いてる扉を開けると、SF映画などに出てくる
戦闘機のコクピットに似たシートが設置されたいた。
「スゲー! カッコイイ!」
ヒロキの声で、中を見た他の青年達が、別々の球体に駆け寄り、歓声をあげるのが聴こえる。
中からは、設置されているスピーカからコンピュータ制御によるアナウンスが流れている。

”ようこそ、未来へ! 画面の中から好きな『テーマ』を選んでください!”
球体の外からは見えにくく、シートに座り画面を見ると、
画面上には浮きがった複数の枠に文字が書いてあった。
「正義」「犯罪」「勉学」「平和」「戦争」…
他にも、あった気がするが、それ以降はヒロキの視界に入らなかった。
衝動的に、興味本位で「戦争」を選んだからだ。

”この『テーマ』でよろしいですか?”
アナウンスの声に、ヒロキは「決定」を押す。
”それでは、あなたの「未来」のスタートです。”
その声が聴こえなくなるのと入れ替わりに画面が黒くなる。
「戦争」をテーマにした、ヒロキの「未来」がスタートした。

やがて視界に現れたのは、臨場感のある家屋やビルの残がいと多くの亡骸。
「… …」
立ち尽くし周りを見つめながら呆然とするヒロキ。
降り注ぐ爆弾が破裂し、激しい衝撃音がヒロキの体を揺らす。

まるで、最初からゲームなんか無かった様に
音も物も現実感がある。
ここが一体どこなのか、他の友達はどうなったのか、
何も分からないまま、ヒロキは立ち尽くしていた。



Copyright © 2008 わらがや たかひろ / 編集: 短編