第63期 #4

夜半、牢乎として聳える城郭、濠の水面に月の揺蕩う。金色の三日月、竹林の鳴けば其のかんばせを歪め、凪けば其の峭刻たるを明か凛冽の水鏡に覗く。
 其の玄妙たる風情に憑かれし男一人。いかでか月を我が物にせんと欲す。
 掲げたる小太刀、月を宿し目映き白刃、此処を先途と柄を握り、臍下丹田、横一文字に切り裂けば、玉の汗、しとどに額を濡らし、流れ出ずる血潮、脈々と地を朱に染める。
 果然、月は血溜まりに揺らめきたり。返す刀、喉に打っ立って、男、莞爾と笑み軈て徒になりにけり。



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