第63期 #2

fffface

「人間の感情ってさ俺らが思ってたようなのとはちょっとちがうんだって。」
ほんとは何それって思ったけど黙ってわたしは続きを聞いた。
「ふつう俺らが考えるとさ、表情と感情の関係って感情が先だって思うじゃんか、楽しいから笑う悲しいから泣くみたいに。でもそれが違うんだって」

「逆なんだ。人間って笑うから楽しい、泣くから悲しいっていう感情が湧くんだって。機械で計ったらさ、表情を出す信号の方が先に出てるからわかるんだってさ。親の知り合いが言ってた…」



「おれ女の子のちょっと淋しそうな顔が好きなんだよね。」
「ふーん、…そうなんだ。」
わたしはちょっと淋しそうに答えた。
「変だろ?」
変じゃねえよ馬鹿「…普通だよ。」
「そうかな?、だって普通は楽しそうな顔とかさ、幸せそうな…笑顔とかが好きなんじゃないかな。」
「嫌いなの?笑顔」
「いや…」
「じゃあ普通じゃない」
「そうかな」

わたしがいつもどんな表情をしているのかは、私自身には見ることができない。友達とおしゃべりしているときや、やっと雲から晴れ間が見えた時、こんな風に突然彼に話しかけられたときとか。
でも後からわたしが今どんな表情をしているかを感情が教えてくれる。わたしはいま本当に嬉しそうな顔をしているに違いない。そしてたぶん…



Copyright © 2007 藤舟 / 編集: 短編