第63期 #13

母なる大地と 父なる空

 昔々、この星に何も無い頃のこと。

 母なる大地と父なる空が出会い、キスをしました。

 二人が結ばれた事に空の彼方の星々たちは祝福し、以前にも勝る輝きを放ち、二人を祝福しました。

 それはもう、大層美しい光景だったと言います。

 大地と空の愛は、何も無い大地に緑を育みました。様々な命がこの星に芽吹き始めたのです。

 ですが、どんなに仲の良い夫婦でも喧嘩はするもの。

 大地と空もご多分に漏れませんでした。

 ある日、些細なことで二人は大喧嘩。二人は仲互いし、互いの姿が見えないように、間に深い深い雲を引いてしまいました。

 その様子を見た星々は大層悲しみました。

 その場を動くことが出来ず、二人を見守ることしか出来ない星々たちには、二人が作る地球という星が、一日一日僅かながらその姿を変えていく星を眺めることが、毎日楽しみで仕方なかったのです。

 ですが、深い雲を引かれてしまっては、二人の様子は愚か、その星の様子を見ることは叶いません。

 星々達は、そろって悲しみの涙を流しました。

 その涙は激しく、雲を破り、地球の大地まで届きました。

 雨は大地を削り川を作り、大小様々な川は合流と別れを繰り返しました。まるで喧嘩をして仲互いをしたり、再び仲直りをするかのように。

 そうして広大な海は出来上がったのです。

 ですが、その雨を身に受けても尚、二人は喧嘩を止めませんでした。

 けれど、いつしか海に様々な生命が生まれ始めました。

 いろんな生命たちは、時には喧嘩し、時には涙し、それでも皆手を取り合って強く生きていました。

 そんな姿を見て、大地は自分を恥ずかしく思い、夫である空に仲直りを申し出ました。

 夫も、大地の様子が気になっていたのでしょう、空はその申し出をさっそく受け取りました。

 二人は仲直りし、再びキスをしました。

 その折、この星に生まれ出でたのが人間だといいます。

 だから、私たち人間は、今も無数の星々に見守れながら、空と大地に愛されながら生きているのです。



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