第61期 #13
ある日。
坂の上の夕焼け空を、明滅する光が一筋ゆっくり移動していくのを目で追っているスガヤさんのことを、電柱の陰からこっそり見守っているササキさんのことを、少し不審そうに横目で眺めながら歩いている黒猫を、うっとりしながら見つめているシマネさんのことを、またかこの猫好きがと呆れた様子で見るハマダさんのことを、ちょっと顔が怖いお兄さんだなと通りすがりに考えたミカちゃんのことを、坂の上の家の前で待っているミカちゃんの母親であるナナコさんのことを、散歩はまだですかと見上げる飼い犬のタロのことを、あれは我々の天敵であると認識して名残惜しそうに地球から飛び去る宇宙船があった。
誰も知らないけれど。