第60期 #7

金魚ガ笑ウ

思い切り殴ってやると
彼女の鼻から一筋の鼻血が流れた。


赤い、赤い、
それは、やがて彼女の白い肌をつたって
床へと落ちると一匹のかわいらしい金魚に変わり、
ぴちぴち、跳ねた。


「君、それは金魚じゃないか」
『ええ、金魚ですよ。次はもっとうまく出して見せます。』


彼女は艶っぽく笑った。
ああ、この表情が私を狂わせるのだ。
なぜ殴らせるのか。


金魚は用意していた茶碗に水を貼ったものに入れておいた。
きっとこいつも1週間後くらいにはぷかぷか浮いているのだろう。


明日にはこの女を実家のある島根に連れて行く。
私たちは結婚する。



Copyright © 2007 仲根琴 / 編集: 短編