第60期 #19
詳しい年代は知らない。祖父が僕の誕生祝で買ってきたんだ。
荷物を整理しながら妻に話し始めた。わざわざ実家からテディベアを連れてきたのだ。何も言わないが不審に思わないとも言えない。家族になったばかりの妻を不安にさせる理由はない。だから話を始めた。
おじいさんは僕の祝いを買うために町を歩いていて、偶然目に入ったアンティークショップのショーウィンドウに飾られていたのを見て「これにしよう」と思ったらしい。
おばあさんは反対したみたいだ。新品のほうがいいってね。でも、おじいさんは譲らなかった。これより相応しいものはないってね。おじいさんが言い張るのは珍しいことでね。そこまでいうならってことで僕の元へ来ることになったんだ。
レイはもう死んでしまったけれど、ほら写真見せただろ? 犬のレイ。レイとテディベアT・Bは仲がよかった。信じられないかもしれないけど、レイとT・Bの結束力は見事だったよ。T・Bが五体満足なのはレイのおかげだって昔、母はよく言っていたくらいだ。一緒に写っている写真も何枚かあったと思う。仲よさそうだっただろう?
不思議なものでね、T・Bは確かにぬいぐるみなんだけど、ぬいぐるみだって気はあまりしなかったな。レイと一緒にいたからかもしれないし・・・・・・そうだ、まだ小さい頃僕の前の持ち主は魔女の血をひいた女性だって聞いたことが。嘘じゃない、作り話かもしれないけれど確かにそう聞いたんだ。怖がることはなかったな。T・Bが来て変なことが起こったっていうことはまったくなかったからね。・・・・・・だろ? 穏やかな瞳をしているんだ。
僕たちに子どもができたらT・Bをプレゼントしよう。以前からずっとそう思っていた。だから連れてきたんだ。でも、T・Bは僕らより年上だ。子どもの扱いにT・Bが五体満足でいられるかは難しい。
だから・・・・・・僕は新しいものを送るよ。そして子どもが大きくなったらT・Bの横に飾ろうと思う。
君はどう思う?