第59期 #19

水晶振動子

 水晶振動子とは水晶の圧電効果を利用して高い精度の周波数の発振を起こす受動阻止の一つ。クォーツ時計、無線通信、コンピュータなどあらゆる現代エレクトロニクスには欠かせない部品である。
「有難うウィキさん」
「困った時はいつでも呼びな」
「キャー格好良い! つまり要するに! 水晶に電圧を加えると非常な精度の振動を発振してくれる! ってことなんだ! 解ったかなみんな。解んないか。まああたしも解んないけど、でもだから。そんな時は実験!」
「実験!」
「有難うみんな! そんな訳で、この完璧な、傷一つ無い、世界で一番神聖な聖堂に置かれた水晶のように、眩いくらいに美しい、17歳、思春期真っ只中、好きなバンドはヤーヤーヤーズのベルバーナ君で一つ! 実験しよう! しようよみんな!」
「実験! 実験!」
「さあベルバーナ君、あたしの作ったこの実験装置の中に入って」
「ち、ちょっとやめて下さいよ、やですよ」
「言うこときかないとこのカート・コバーンモデルのピック、あげないよ」
「いらないですよそんなもの」
「良いから良いから。あとで良いことしてあげるから。とぉっても良いこと」
「だからやですってば!」
「よし! 入った! 実験開始! 助手のピコピコマシーンのピコリン君、スイッチお願いね!」
「ぴこ、ぴこ」
「ああ、そこのスイッチじゃないよそっちそっち、そうじゃなくて、あ、それだ」
 びびびびびびび!
「痺れる痺れる痺れる! 電気で痺れる! これ凄い痺れる! やめて!」
「震えてる! ベルバーナ君が震えてる! 実験は、成功だね!」
「成功! 成功!」
「ところで、この小説は水晶振動子なんて名前なのになんでそんな名前の子が出てこないのかしらねえ。振動子ちゃんなんて、かわいいじゃん」
「知らないです!」
 びびびびびびび!
「ところであたしはこんなに可愛い、黒いレザーのミニドレス、黒巻き髪、もちろん下着も黒、黒いガーターベルトに黒いストッキング、黒いエナメルのヒールに黒いマニキュア、でもちょっとだけ唇は赤、そこがアクセント! って感じにすっごく可愛いのに、性別では女子ではありません、というのはなんで?」
「知りません知りません知りません!」
「ねえ、あなたを見ていると、いつもは別にあってもなくてもどうでも良い存在の股間のアレが熱くたぎるのは何故? すごくどくんどくんいってるのはどうして?」
「だから知りませんってば!」
「ねえ」
 びびびびびびび!



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