第57期 #5
錚々と冷えた空気が上昇してゆきます。暖められて、このわたくしの足元から。
何をしているのかと尋ねるひとがありましたので、迎え火をと答えましたらあとは何も言わずに立ち去ってしまいます。
構わず立っておりました。鋭く一度、百舌鳥が鳴きました。
やがて、提灯に灯さねばならないのだろうに。と、呆れた風情の声がして、けれど姿はなく。
季節も違う。と、今度は笑い声。
目を閉じておりますと、目の前に立っているような。
ぱちりと燃えていた小枝がはぜる音。
目を開けると、しょうしょうと細く長く、空に向かって煙が昇ってゆくのが見えます。
それきり、なんの音もなく誰も来ず、急に火が強くゆらめき、あとはゆっくり静かに消えてゆくばかり。
ぼんやり煙を見送っておりましたら、先ほどのひとがまたやって来て何をしているのかと尋ねるので、送り火をと答えました。
寒いのだから早く家へ戻ったほうがよいと言い残して、立ち去ってしまいます。
飴玉ひとつ頂きましたので、いま、それをなめております。