第57期 #24
「残念だが、君の能力は他の会社で使ってもらうほうが良い、という結論に達した。解るね? 健闘を祈っている」
会社の業績は下がり続けているが彼らの給料を下げることにより、男の給料は問題なくあがりつづけていた。
夜景を見ながら家へ帰る。
白いネグリジェの娘が出迎える。おかえりお父様。
ただいま。
彼は娘を愛していた。愛していた。
彼は休日になると街に出る。一度休日に娘が部屋で男の子と楽しげにしているのを見たことがある。男は街を彷徨う。娘に似た少女を探す。娘に似た少女はそこらじゅうにいた。出張で行ったパリでエッフェル塔の前を歩く、白いワンピースの我が娘を見つけたことがあった。トイレで用を足していると、娘はいつの間にか横に立っていた。男は少女を買う。いろいろなことをさせる。泣き叫ばせるのが、一番性にあっていた。あらゆる手を使って、いろいろなことをして、いろいろなクスリで、少女に涙を見せてもらう。叫び声をあげてもらう。よだれを舐め取ってもらう。許してくださいと言わせる。血飛沫が舞うまで鞭を振るう。シーツに付いた赤い飛沫を男は見たがった。許してください。彼は娘を愛していた。
お父様、おかえりなさい。
ただいま。
娘は学校を辞めた。良く解らない男と、良く解らない詰まらないビジネスを始めた。
これは、全く新しい、ビジネスなのよ。
娘の会社は父親の会社を三年で倒産に追い込んだ。
だが彼はそんなことはどうでも良かった。
その夜は月もネオンも輝かない真っ暗な夜だった、その夜、彼は娘を抱いた。その手に抱いた。抱きしめた。深く進入した。深く深く。何処へ。何処までも。娘は笑顔であった。耳元にキスをされる。囁かれる。お父様。もっと、深くよ。
男は娘に小遣いを貰い、街をふらふらと彷徨い続ける。何処へ。もっと深くだ。スーツを着て、黒い革靴を履いて、鞄を持ち。男は街を彷徨い続ける。ネオン街を三周もすると砂漠にたどり着く。そこにはピアノが置いてある。子守唄を作らなければな。娘は間もなく彼の子供を産む。子守唄を。かわいい息子が産まれた。三人並んで写真を撮る。
目を、閉じて、良いかい。
まだよ。まだ。まだよお父様。
ピアノに突っ伏したままだったのに気がついた。
花は、如何。花束を捧げもった盲目の少女に声をかけられる。赤、青、黄色。少女はめしいた瞳で花束を見つめながら、めちゃめちゃな色彩を歌うように呟いている。