第57期 #19

十三歳

 中学校からの帰り道。従姉妹の家に寄った。二四歳の従姉妹は妊娠していた。家が近くてぼくが二歳の頃から遊んでくれていた。けれどもお腹の子供に障るからもうあんまり遊べないのと言われた。
 それからぼくは家にとんで帰って、魔法少女ララミィに今日のできごとを報告しなきゃなんない。
「楽しい話ね。次の話は残念ね」
 書道の先生が授業中に股間のジッパーを開けっ放していた話には笑ってくれた。従姉妹の話には同情して気分転換の提案をしてくれた。
「明日は日曜だから騒ぎましょう」

 ぼくの住む街の駅前には畑がある。でも電車で三〇分も行けば雑誌に載る街に着く。高円寺には古着屋さんがたくさんあって若い人が大勢くるの。ララミィは教えてくれた。
 駅前の喫茶店のトイレ。ララミィは魔法を使ってぼくと性別を交換した。ぼくは女になってララミィは男になった。ララミィは見た目は二〇歳だけれど二〇〇年生きている。ぼくらの一年が彼女の十年だった。
「しくじった」女になって髪の伸びたぼくを見てララミィが言った。「おれ、きみに恋しちゃった」

 もうすぐぼくは十四歳になる。誕生日を迎えればララミィは魔法の国に帰る。ララミィが家に住み着いたのはぼくの十三歳の誕生日で、魔法少女はこの世界に一年間しかいられない規則だった。
 高円寺からの帰り道。二人で晩御飯にラーメンを食べた。その後、薄闇の小金井公園を抜ける最中、ぼくはララミィにこの世界に残ってくれないかとお願いした。
「むりね」
「誰もぼくの思い通りになってくれない」
 ララミィは女に戻っていた。古着屋で買った服を着たララミィはいつもと違って見える。どうしてこんなにきれいなのか分からない、ララミィの眉山を見つめた。年齢は泥棒で時間は盗賊だと思った。次の瞬間に手に入らないなら壊してやりたくなった。ぼくは男に戻っていた。男の手でララミィの三つ編を掴む。ララミィは嫌がった。ぼくは自分のしたことが恐ろしくなり、手を離した。
 ララミィはぼくを見つめた。彼女の十年はぼくらの一年だった。ララミィはぼくを見つめていた。どこを向いているのか分からない瞳だった。ぼくにはその意味が分からなかった。ただララミィが髪を掴んだのを怒ってないことに安心した。
 それから二人で家に帰った。ぼくは魔法の国に帰ったララミィを奪いかえす将来の計画を立て、産まれてくる二四歳の従姉妹の子供の良い遊び相手になる準備をしなきゃなんない。



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