第56期 #6

境界線

僕は、夢を見ている。
夢とは何だろう?

寝ている間に見るもの?それも夢だろう。
将来の目標?それも夢だろう。
有り得ない空想?それも夢だろう。

夢は、色々な解釈が出来る。
良い夢、悪い夢。色々だ。
だが、一つだけ全てに共通することがある。

それは、夢は現実ではないということ。

だが、現実に起こったことでも、「悪い夢だ」と言って、逃げ出すことがあるだろう。
それは現実ではないのか?

いいや、違う。現実とは、その事を自分自身が「現実だ」と認識した時点で、初めて現実となる。
「悪い夢だ」というときは、現実であって、現実でない。
自分は、現実と認めていないのだから。

そう。夢とは、自分が認めていないということだ。
これは本当の事ではない、と。

では、現実とは何だ?
今生きている時?そうかもしれない。
過ごしてきた過去?そうかもしれない。
自分という存在?そうかもしれない。

ただ一つ通じることは、それは自分が「認めている」ということ。
何故、今生きているといえる?
それは、自分が生きていると「認めている」から。
何故、過去がある?
それは、自分が歩んだ道を「認めている」から。
何故、自分という物体がある?
それは、自分がそこにあると「認めている」から。

こうして考えてみると、夢と現実の境目は、極々簡単なものだ。
それは、自分が「認めている」か「認めていないか」のどちらか。

では、夢は「認める」ことが出来れば、現実なのか?
現実も、「認めない」とすれば、夢なのか?

それは有り得ない。
夢は夢のままだし、現実は現実だ。
夢を幾ら認めてもただの空想となり、現実は幾ら認めなくても、それは現実逃避に過ぎない。

いつかは、夢を認めなくなり、現実は認めなければいけないときが来る。
では、何が夢となり、何が現実となるのか。

僕は、さらに夢を見る。



Copyright © 2007 林和夫 / 編集: 短編