第56期 #27
虹を破壊した男。
「オーロラを見たんだ」
凍てついたキャンピングカー。オーロラの傷。
神殿のように凍てついたキャンピングカー。
「オーロラを見たんだ」
聖剣グラムを持って、サングラスをかけた男。ポルシェで高層ビルから飛び降りる。でも死なないのさそういう男は。男は人を殺したことがある。愛する人を殺されたことがある。
愛する人を殺したことがある。
愛してなどいなかったんじゃないか、と思ったことがある。
「誰のために鐘は鳴る?」
お前のために鐘は鳴る。
ジギープレイドギター。
階段を昇り続けている。
悲しみなんて感じるわけも無く。
階段は壊れ続けていく。
「壊して。お願い。めちゃくちゃに、壊して」
「なんて美しい」
廃墟。瓦礫。人間。
「とても美しい」
「また作り直しだ」
アンタレス。
アンタレス輝くお前。
「なあ、なにをどうしようか。なあ。聞いているか。まあどうでも良いか。そうだな。地図でも書いてみるか」
公園には紳士の銅像がいつも茂みに突っ込まれておられる。
誰の仕業かは知らないが、見つけたら直してやる。
重い石像だからなかなかの重労働である。
踊る男。雪の上を、踊る男。
「コーヒーをくれないか」
これは無謀な願いか。美しい男。美しい揺らぎ。一瞬と永遠。演算は繰り返される。可能性は試され続ける。虹を破壊した男。神殿。虹色の眼球譚。オーロラを見たんだ。
「ただの、ガラスだまだね」
「美しいね」
神殿。
モザイク画。
炎など熱くなく。ガラスを突き破り、あなたを手に取る。あなたは目を閉じる。
クモは餌にした蝶の羽をつけて羽ばたく真似をしていた。
虹が凄い数だ。
虹。
ソフトクリームが溶けてしまった。
今年の夏は暑い夏では無かった。
今年の夏は大切な夏では無かった。
世界は変わろうとしている。今皆の手のひらの中に小さな地球儀が乗っている。ハイテク機器なので世界で何が起こったのかすぐ更新されるのだ。アフリカ大陸の真ん中には大きな穴が開いていた。それは何処かへ行けそうな穴だ。いや、過去からの穴だ。過去からの復讐の穴だ。
いかづちの中に書かれた文字。詩。
そんな絵を描いていたのか。
いなづまを掴む。
サンダーマン。
「いなづまを捕まえた男を知っているか?」
「さあ」
「いなづまを捕まえた男を知っているか?」
「知らないねえ」
「いなづまを捕まえた男を知っているか?」
「聞いたことが、あったような気もするが。
知らないね」