第56期 #11

休日雑景。

 「出会った頃はあんなにも愛情を注いだのに、今じゃダラダラと関係を続けているだけなの。」
 とそこまで言って彼女は冷めたカフェオレを舐めた。それを交替の合図と受け取った僕がさも興味を持っているかのごとく、
 「何が二人をそうさせたんだい?」
 なんて漫画に出てくるような気障なセリフを吐くと彼女は、
 「時間が経つにつれて愛が消えていったのよね、でもかといって別れを切り出せないの、それなりに長い時間一緒に過ごしたから、彼に悪い気がして」
 と流暢に答えた。

 友人の恋愛譚を聞きながら僕が考えていたことは主に二つのことで、今日の昼食をラーメンにするか、それともハンバーガーにするかということが一つと、もう一つは、彼女があんなにも注いだ愛情から愛が消えて、今は情で付き合っているのだろうか、ということだった。僕は我ながら上手いことを考えるなぁとほくそ笑みそうになるのを堪えながら、ただ彼女の話に適当なタイミングで頷いていた。



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